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熱分析による鋳鉄成分の推定

鋳鉄は多成分合金ですが、含有炭素量が鋳鉄の性質を見極める上で最も重要なことです。 炭素以外の元素を炭素に換算し、Fe-C二元系合金として鋳鉄を評価することが簡便で実用的な方法でとして普及していますが、このとき使用される指標が炭素当量(CE値)です。 炉前での溶湯管理はこのCE値を主に管理し、これを測定するための機器がCEメータと呼ばれるものです。 CEメータは熱電対を組込んだ小型カップに溶湯を注ぎ込みその冷却曲線からCE値を測定します。 更に、シェルカップにテルルを塗布することでレデブライト凝固させて白銑共晶温度を測定することで炭素含有量および珪素含有量も推定します。 日本ではおよそ40年前にリーズ&ノースラップ社のCEメータが販売され、その後パーソナルコンピュータを利用した熱分析機器が普及しています。 ここでは、これまで提唱されているCE値や%C、%Siの回帰式を紹介します。

1.炭素当量(CE値)の推定

1-1. 亜共晶ねずみ鋳鉄の元湯

以下の回帰式が提唱されている。

Chaudhari:

ここで、はオーステナイト液相面温度(初晶温度)。

Moore:

R.W.Heine :

リーズ & ノースラップ社[1]は可鍛鋳鉄と低燐亜共晶ねずみ鋳鉄に関して初晶温度と炭素当量の関係を表にまとめている。 この表から、初晶温度の範囲に従って求めた回帰式を下表に示す。ここで、a、bは CE値=a+b*(初晶温度)の係数を示す。

初晶温度の範囲 a b
1268℃以上 15.344 -0.0096
1232℃以上1268℃未満 17.041 -0.0109
1154℃以上1232℃未満 14.690 -0.0090
1143℃以上1154℃未満 9.495 -0.0045
1143℃未満 16.924 -0.0110

1-2. CV及びFCDの過共晶元湯

ダクタイル鋳鉄やCV黒鉛鋳鉄の元湯はCE=4.3〜4.6の過共晶となっている場合があり、この範囲では初晶反応が共晶反応とほぼ同時に起こるため図1の青線のように初晶温度の測定は通常の場合、不可能となります。 

図1.熱分析曲線の代表的な例

ただし、CV黒鉛鋳鉄のように0.010%〜0.030%のマグネシウムが含有量している場合、過冷が起こり図1の赤線のような冷却曲線となります。 このときの初晶温度は共晶反応で発生する凝固潜熱の影響を受けずに安定したものとなり、CE値と良い相関を持ちます。 もう一つの方法としては、図1の黒線のようにカップにテルルを塗布したものを用いる方法ですが、高炭素・高珪素の溶湯のためカップ内の溶湯を白銑化するのは、テルルの塗布量が多くても困難です。 仮に初晶温度が首尾よく表示されても、大量のテルルを使用することで初晶温度が低下します。 しかもテルルの歩留まりは安定しづらいので初晶温度そのものに大きな誤差を含むことになります。 結局、これらの溶湯のCE値を測定するにはカップ内にミッシュメタルまたはMgNi合金のように反応の穏やかな球状化剤でカップ(あるいはスプーン)内の溶湯をCV黒鉛鋳鉄の溶湯にすることで可能となります。 このときのCE値を算出する推定式は前節の表のような1次関数となります。

2. 炭素含有量の推定

Mooreは亜共晶ねずみ鋳鉄に関して、白銑凝固させた熱分析曲線(テルル塗布カップ)から得られた結果と化学分析値の間の重回帰分析を行うことで、次の2式を得、これらを用いて式(3)を得ました。

  r=0.995     ・・・・・(1)

r=0.989      ・・・・・(2)

                ・・・・・(3)

ここで、 は初晶温度及び白銑共晶温度です。

上式は%C:3.05%〜3.76%、%Si:0.61%〜2.88%、%P:0.01%〜1.92%の範囲の溶湯で実験はおこなわれ、式(3)は95%信頼性限界で±0.09%Cの誤差を含みます。 他の研究者による回帰式も発表されていますが、実用的には式(3)を用いて発光分析等の分析結果と回帰分析をすることで検量線を用いれば充分に実用になります。

3. 珪素含有量の推定

Mooreは炭素含有量の推定と共に珪素含有量についても式(4)を得ています。

            ・・・・・・・・(4)

上式は%Pに依存し、含まれる誤差は±0.3%ですが、%Pが0.05%以下である場合には±0.14%まで低減出来ます。 この場合も実用的には式(4)を用いて溶湯種別ごとに検量線を引くことで多少誤差を低減して使用できます。

4. 成分分析と誤差

CE値については、リーズ & ノースラップ社の表を、%Cには式(3)を、%Siには式(4)を適用した場合の1℃の誤差はそれぞれ、およそ0.009%、0.009%、0.076%と見積もることが出来ます。 従って、カップ内に組み込まれた熱電対の素線管理は大変重要な要因となります。 また、式(4)から明らかのように%Siでは共晶温度への感度が大きく共晶温度の決定には注意を払う必要があります。 アナログの記録計であっても、デジタルのPC利用の計器であっても、温度判定の一定の基準を設けて常に一定になるようにすべきです。 デジタル計器の場合は離散値として読み取られた温度データを平滑化処理し微分値を求め更には2階微分値で決定されます。 図2は冷却曲線の初晶温度の代表的な形状を示します。 この図のように同じ規格の溶湯でほぼ同等の成分あっても、配合比や配合材料のロット、保持時間によって検出される初晶温度停滞点付近での形状は変わります。 同じことが共晶温度についても言えます。

図2 初晶温度の色々なパターン

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鋳鉄鋳物のための状態図と熱分析
熱分析による鋳鉄の黒鉛形状の判定
CV黒鉛鋳鉄(CGI)の製造について

上記のページも参照下さい。

 

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参考文献

[1] ダブリュー・イー・カーナー(株): 「TECTIP-K溶湯管理の手引き」

[2] Moore A. Foundry Trade Journal 1971, 131, 885.